ロゲイニングコース設計の帝王学

ロゲイニングの帝王として知られ、数多くのロゲイニング大会で優勝を飾り世界選手権にも出場している、柳下大さんにロゲイニングのコース設計のポイントについて寄稿していただきました。より良いロゲイニングコースの作成のために「ロゲイニングの帝王」のアドバイスを是非ご活用ください。

ロゲイニングのコース設計

 ナビたびユーザは登録されているコースを利用するだけでなく、ユーザ自身がロゲイニング形式のコースを設定することできます。ただ、コースをつくることに興味を持っていても、実際にどうやってコースを設計すればよいかわからないという方もいらっしゃるかもしれません。そこで、今回はよりコース設計に興味をもっていただくために、ロゲイニングのコース設計のノウハウや自分でコースを作ることの楽しみや面白さについて、記事にまとめました。ご参考になれば幸いです。

1.エリアとコンセプトを考える

コース設定をする上で、はじめに以下の2つの要素について検討してみましょう。

・どこでコースをつくる?

・どんなコースをつくる?

まず、「どこで」についてですが、自分の住んでいる近辺、観光名所などが多い地域、景色がきれいな場所、などが考えられます。CP選定やルートの調査のために現地へ何度か足を運ぶ必要がありますので、まずはそれを考慮して行きやすい場所を選定するとよいでしょう。

場所を考えたら、大まかで構いませんが範囲についても考えてみましょう。後ほど詳しく触れますが、ロゲイニングの競技時間は3~6時間程度が一般的です。

(大会などではそれよりも長い時間の場合もあります)

少なくとも、3時間は楽しめる(=回り切れない)程度の範囲は確保しましょう。

次に「どんな」についてですが、こちらはコースのコンセプトになります。自分のお気に入りのスポットを紹介したい、地域の名所を巡りコースにしたい、あるいはグルメをテーマにしたい、などなど。さらにどの季節が適しているか、市街地を中心にしたいのか、郊外や山地も含めてハイキング、トレイルランニング要素も含めるのかという要素もあります。

コースを作る際には参加者が安全に楽しめることを念頭に入れてエリアを選定しましょう。

特に山地に設定する場合はこの点に留意する必要があります。

エリア選定で参考になる地図

地理院地図

https://maps.gsi.go.jp

ナビたびでもデフォルト背景地図となっており、日本全国が網羅されています。計測機能で距離を測り、おおよそのコース範囲を決めることができます。

GoogleMAP

https://www.google.co.jp/maps/?hl=ja

名所等の情報が口コミで載っており、ストリートビューで通れる道や現地の様子を知ることができます。

2.現地調査をする

エリアとコンセプトが決まったら現地調査に向かいます。CP候補探し、写真撮影、ルートの調査等が目的になります。事前に地理院地図やGoogleMAPなどからCP候補になりそうな場所をある程度ピックアップしておくとよいでしょう。もちろん事前に得られる情報だけでなく、自分の足でCP候補を探していくことが楽しみとなりますし、コースを作るうえでは自身の作りたいというモチベーションにつながります。

ナビたびのロゲイニングカメラ機能

地図調査の際にはナビたびでは写真撮影機能(ロゲイニングカメラ)を用い、CP候補を撮影しコース作成に活用することができます。また、エリアの広さを把握することや補足情報等の書き込みができるよう紙地図を持参すると便利です。写真撮影の際は、見本表で見てわかりやすいもの、アングルで撮影するようにしましょう。写真とともにEXIF情報の一つとして位置情報を付加することにより、地図上で撮影した位置がわかりますので、そのままCP位置設定が可能です(ロゲイニングカメラで機能開発予定)。

CP設定の留意点ですが、基本的には自由に立ち入りができる場所、写真撮影ができる場所が望ましいです。私有地や個人の所有物、あるいは店舗等をCPに設定したい場合、事前に許可を取ることが必要と考えてください。立ち入り可能でも例えば、神社の境内、人通りの多い駅前などは何らかの注意喚起をコース説明に入れるようにしましょう。

予定しているCP数より候補は多くとっておくことをお勧めします。配点のバランスを考える際に取捨選択が発生しますし、ストックがあればCP位置を変えた別コースをリリースすることもできます。

3.CP選定と地図範囲・競技時間の設定

CP選定と並行して行うことになりますが、地図の範囲と競技時間を決めていきましょう。

ナビたびベースではコース範囲の縦横比率など制限はありませんが、紙に印刷して楽しむことも想定して、用紙サイズの縦横比に合わせることをお勧めします。

サイズと適した競技時間を以下に示します。また適したCP数についても記しておきます。

用紙サイズ範囲 (縮尺1/25000の場合)推奨競技時間推奨CP数
A4サイズ5.2 x 7.4km3時間30-40
B4サイズ6.4 x 9.0km4-5時間35-45
A3サイズ7.4 x 10km5-6時間40-50

必ずしも上記の通りである必要はありませんが、バランスの取れたコースを設定する目安になると思います。実ルート距離で、最低限でも満点はギリギリ狙える程度のボリュームは確保したいところです。走力のある参加者は、平地で1時間当たり12km前後は走りますので、例えば3時間ならベストルートで36km以上が目安になります。

CPの配置は会場近辺に多め、遠方は分散することが基本になります。CP配置の密度に偏りがあっても配点で調整できるので問題ありません。また、一筆書きが難しい位置にCPを設定すると、CPの取捨選択やルート取りの選択肢が増えます。

4.配点を行う

CPが決まったらいよいよ肝となる配点です。配点が面白さを左右するといっても過言ではありません。まずは総得点を決めましょう。キリがいい数字にしたほうが参加者は作戦が立てやすくなります。CP数が30か所であれば1000-1500点、50か所であれば1500-2500点程度に設定するとよいでしょう。

続いて最高点、最低点を検討します。

例えば、CP数が30で計1000点なら平均は33.3点になります。配点はCPの判別がしやすいよう、同じ点数のCPがないように設定します。平均点を中心付近に1点刻みの19~48点で並べれば計1005点で、これを1000点になるように多少調整することでベースの配点が出来上がりますが、最高点はその並びより高く設定すると取捨選択の幅が広がります。おおよそ平均点の2~3倍、上記の例なら65~100点程度が最高点に適しています。その分最低点も低くなり、上記の例なら10点程度が適しています。

123456789101112131415161718192021222324252627282930
171820222324252627282930313233343536373839404142434445464748
111213141516171819202122242628303234363840424446505560657280

上:一点刻みをベースにした例

下:最低点11から最高点80に範囲を拡げた例

(合計はいずれも1000点)

配点をする際は、近くは低めの点数で遠くは高めの点数が基本になります。山地など高低差のある場所は時間がかかるので、配点は高めに設定します。また、ある程度ルートで一筆書きしやすいブロックに分け、ブロックごとの配点で考えます。ブロック内でお気に入りCPは高めに設定するとよいでしょう。配点の高いブロックと低いブロックを交互に設定すると、ブロックによる偏りが緩和され、どのブロックを選んでも一長一短になるので面白いコースになります。また、ポツンと独立したCPがあれば高得点にするのも手です。山地など高低差のある場所は時間がかかるので配点は高めに設定します。

さらに工夫するなら取捨選択に悩むCPも設定してみましょう。走力がある人が取りに行きたくなりますが、無理をすると他の高得点ブロックに届かない、あるいはタイムオーバーの恐れがあるという意味罠のようなCPです。ここはコース設定者の腕の見せ所でもあります。

事例A

多くのひとが行くけどルートが分かれるCP設定の例です。110のポイントは十字路で東西南北どこからも寄りやすい位置にあり、ルートも東西、南北、北東、北西、南西、南東)の6通り(逆も含めると12通り!)になるので、ルート取りは多彩になります。

事例B

54のポイントは100-54-33でスムーズに取ることができ、点数も悪くはありません。ただ100-33とカットする流れもスムーズで、カットすることでさらに高得点に寄れたり、制限時間に合ったり、という可能性もあり取捨選択が大事になるポイントといえます。こういったポイントは高すぎず低すぎずの絶妙なポイント設定にしましょう。

補足1:乗り物の利用

都市部のロゲイニングでは乗り物OKルールが採用されることがあります。このルールで走力差による点差を補えたり、エリアを広範囲にできたりというメリットがあります。ただ、ロゲイニングはスポーツなのであくまで自分の足で回ることが主として、乗り物利用が前提になりすぎないよう、バス路線付近の配点や距離でバランスを考えましょう。

補足2:ボーナスポイントの設定

コースの特色を出すためにボーナスポイントを設定したい場合もあるでしょう。以下の一例です。

・指定のCPを全部取ればボーナス点

・グルメポイントで食事中は時計ストップ、買いものをすると得点加算

・動く対象物(電車、船など)を撮影するとボーナス点

ボーナス点の設定によってはナビたびでも設定可能な場合もあります。なお、配点バランスに影響しすぎないよう、ボーナス点は多くとも総得点10%以下が望ましいでしょう。最後にバランスを見て配点を微調整します。微調整しながら当初に設定したキリの良い合計点に合わせていきましょう。

5.コースを仕上げる

配点が決まったら写真見本と地図の作成を行います。ナビたびのコース作成機能でいずれも作成が可能です。また、写真見本表やコース図はナビたびからPDF出力することも可能です。基盤地図情報などを用い地図を作成する場合は、地図編集のできるソフトウェアを用います。私は簡易的な編集の場合はQGIS、本格的に加工・編集も行う場合はO-CADを主に使用しています。

ナビたびでは、公開コースにもできますし、イベント用の限定公開とすることも可能です。

作ったコースをぜひ多くの方に楽しんでもらいましょう!

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