【インタビュー】少人数運営で大会を成功させるコツは? | 市川七福神ロゲ | 山田海音さん

2024年8月、NaviTabiアプリを利用した「市川七福神ロゲイニング」が千葉県市川市で開催されました。このイベントを1人で運営された山田海音さんにお話を伺いました。

聞き手:ナビたび 山本英勝

── まずは、簡単な自己紹介をお願いします。

千葉大学のオリエンテーリング部の山田海音と申します。普段はオリエンテーリングを中心に、アドベンチャーレースやロゲイニングなどの競技にも参加しており、NaviTabiアプリにもお世話になっています。

── 今回の市川七福神ロゲイニング大会はどのような経緯で企画されたのでしょうか?

僕はランニングがあまり好きではないのですが、走らないと競技的にも強くなれないので、トレーニングの一環としてロゲイニングを取り入れられないかと考えたのがきっかけです。特に七福神のような、分かりやすく巡れるスポットがあれば、楽しみながら長距離を走れるのではと思い、家からも近い市川の七福神をテーマにロゲイニングを企画しました。

── 今回、NaviTabiを利用した理由について教えてください。

NaviTabiは大会運営に必要ないろいろな業務を代替してくれるアプリだというのがあります。分かりやすいところでは、チェックポイントに物理的なポストを設置する必要がなく、GPSを使ってのパンチや点数計算などの競技的なところをアプリで自動でやってくれるのは大きな利点です。

それに加えて、NaviTabiでは時刻指定の一斉スタートができたり、参加者の現在地をリアルタイムで追えたり、通常の大会で必要ないろいろなパートの業務をアプリがやってくれるので、大会運営がとてもスムーズに進められます。

── 事前準備はどのように進められましたか?

スポット選びについては、現地に行ってからスポットの候補を見つけ切るのは大変だと考え、まずは市川七福神の周辺のエリアで歴史的なスポットや観光名所などを事前に調べました。そして実際に現地を走って確認し、道中で見つけたいいスポットはNaviTabiのスポット作成機能を使って、その場で登録しました。GPSで正確な位置が分かり、写真もその場で撮って登録できるのが便利でした。今回は参加者に紙で配布する地図はオリエンテーリング向けのソフトウェア(Purple Pen)で別途作成しましたが、スポット一覧はNaviTabiのPDF出力機能を活用して印刷しました。

参加者募集については、イベント申込みサイト JOY(Japan-O-entrY)を利用しました。要項やプログラムをこまめに更新し、どんな大会なのかを理解してもらい、安心して参加できるように意識しました。

── 準備中もナビゲーションの楽しさを感じられたようですね。

スポット調査の段階からかなり感じました。普段は千葉大学周回の3kmコースを走っているんですが、景色が変わらず飽きてしまうんですよね。今回の調査では次にどんな景色やスポットが現れるのかを想像しながら街を走れたので、ナビゲーションスポーツの楽しさを事前準備の段階から味わうことができました。

── NaviTabiアプリでの準備について教えてください。

まずアプリ上で「市川七福神ロゲ」のイベントを作成し、そこに先ほどお話ししたスポットを追加していきました。

それ以外で今回特に使ったものは、位置情報のトラッキングの必須化です。この設定により、参加者の現在地を運営側がリアルタイムで把握できるので、遠くに行ってしまったり、連絡が取れなくなったときにへの対応を素早く取れるようになりました。

また、エントリー番号の入力も必須に設定しました。アプリ内の表示名が本名でない参加者も多いので、事前にスタートリストでチーム番号を割り振り、その番号を入力してもらうことで、誰が誰なのか分からなくなる心配をなくしました。アプリでの準備が整ったら、あとはもう当日は参加者に楽しく走ってもらうだけでしたね。

NaviTabiアプリでのイベント表示

── 大会当日の運営はどのように進めましたか?

NaviTabiアプリで参加者の承認を必須に設定していたため、当日の受付では参加者をアプリ内で承認しました。その後は紙の地図や参加賞を配布するだけで準備が完了しました。

全員がそろった時点で軽く挨拶をして、スタート時刻が近づいたらアプリで一斉スタート。3時間経過を目安に各自でフィニッシュしてもらうという流れでした。

全員がフィニッシュした後は表彰を経て、閉会式、そして解散でした。トラブルなく終わってよかったです。

イベント当日、参加者に挨拶する山田さん

── 参加者の皆さんが走っている間はどのように過ごしていましたか?

参加者の現在地をNaviTabiアプリでリアルタイムに確認しながら、イベント内メッセージ機能を活用してサポートしました。今回は制限時間が3時間だったので、1時間、2時間、2時間半が経過するごとに、コンビニや自動販売機での水分補給を促したり、電車やバスの利用を案内するメッセージを送信しました。僕としては念のためにメッセージを入れておこうという気持ちで送信したのですが、アンケートによると一部の方は「レース中にメッセージがくると嬉しい」と感じたようで、安全管理の面だけでなく、モチベーション維持にもつながったようでした。

── すべて1人で運営されたのですね。

はい。参加者は約40人でしたが、特に問題なく運営できてよかったです。

── 今回は1人での運営でしたが、やはり大会の運営には慣れていたんですか?

これまで大会運営では主要な役職やパートチーフの経験はなくて、千葉大主催の大会では救護パートが主だったので、あまり参加者と触れ合うようなことはありませんでした。ですので、今回は運営者目線というよりは、参加者の目線で大会を組み立てました。公認大会やランキング対象大会のような競技的にガチガチな感じを目指すのではなく、僕が1人で十分にやれる範囲で楽しい大会を提供できたらと考えていました。

例えば最近もある程度大きなロゲイニング大会にでたのですが、そのときにここをこうしたらもっと楽しくなりそうとか、この部分はアプリで代替できそうだなというのがいくつかありました。そういうところにちょうどNaviTabiがカチッとはまって、そうなるとNaviTabiができないこと、例えば受付業務などの競技的ではないところだけ僕が担当すれば回るかなと感じました。そこに「 こういう大会があったら楽しそう」というアイデアをいくつか実際に組み合わせた結果、今回の大会になったという感じです。

── 今回の大会で成功した点、もしくは改善したい点は何ですか?

成功した点としては、参加者の満足度が非常に高かったことです。アンケート結果でも多くの方が十分に満足したと答えていて、これは正直僕が云々とよりは、NaviTabiアプリが一斉スタートやGPSを用いたパンチ、正確な点数計算などを自動で行うことで、十分な水準で競技が成立していたからだと感じています。
運営としてもトラブルなく終えることができ、非常にスムーズに進行できたかなと思います。

失敗だった点としては、競技的にいくつかの不手際(隣接チェックポイントの番号入れ替わり、チェックポイント付近の通行可能エリアが分かりづらい)があった点ですかね。ここは完全に準備不足でしたので、次回はないように気を付けたいと思います。

とはいえ、大会そのものは非常にうまくいったと感じています。全てを一気にやろうとせず、じわじわといい大会にしていけたらと思います。

── アンケートの話がありましたが、参加者からのフィードバックについてもう少し詳しく教えてください。

アンケートは事前にGoogleフォームで作成し、大会終了後に回答をお願いしました。僕自身がロゲイニング大会に限らずイベントの運営をやるときにフィードバックを最重視しているので、地図にアンケートのQRコードを印刷したり、表彰の後にも皆さんに積極的に声かけしました。その結果、40人の参加者のうち半数の20人が回答してくれました。回答してくださる方は大抵大会に好意的な方が多く、バイアスがあるかもしれませんが、大会の満足度の平均値は5段階で4.7、参加費の満足度は5段階で4.4という評価でした。大会自体は非常に良かったと感じてもらえ、参加費についても低めに設定したことで満足度が高かったです。賞品を多く設定しましたが、多くの方に参加していただけたおかげで採算面でも黒字だったので、運営としても成功といえる結果でした。

良かった点として多かった意見は、大会全体がアットホームで参加しやすかったということがありました。スポットについては、寺社仏閣や公園、貝塚など、歴史的価値のある場所を巡ることで新たな発見があったという意見も多くいただきました。また、温泉やスイーツ店など、僕自身が気に入ったスポットを選んだことが意外に高評価で、レース後にそのスイーツを食べに行ったり温泉に立ち寄るといった声が聞けたのは嬉しかったです。大会を通じて市川の街を実際に知ってもらい、そこで過ごしてもらえたのは大きな成功だと感じました。

運営面では、1人で運営していたことに驚いたという声が多かったです。多くの方が他のロゲイニング大会にも参加されている中で、1人で満足度の高い大会を成立させたことに対してお褒めの言葉をいただきました。

また、表彰対象を多くしたことも好意的に受け取られました。僕はオリエンテーリングを始めたのが大学三年生ということもあり、競技者として表彰されることがないのですが、僕のような層に向けて、タイムや点数だけではないところでも表彰できたらと思っていました。今回、最も早くフィニッシュに戻ってきた人や、一番ギリギリに滑り込んで帰ってきた人など、順位に関係ないところで表彰することで、より多くの人に楽しんでもらえたのではと思います。

指摘のあった点としては、先ほども少し申し上げましたが、地理院地図を使用していたため、細かい道の通行可否がわかりにくかったという意見がありました。ただここに関してはオリエンテーリング用地図の作成コストを考えるときちんと告知して、了承してもらうことになるかなと思っています。

また、スポット一覧に説明文が無かったのが残念という意見も多かったです。例えば七福神だとしたら、「ここは弁財天を祀っています」といった解説があるとさらに楽しく回れると思います。今回はそのような説明を書く余裕がなく、スポット名と写真だけだったので、次回は追加したいと思っています。

── 今回のイベントを実施してどのような成果を得られましたか?

大きな成果としては、NaviTabiアプリの機能や使い方について深く理解できたことです。これまでも、普通のオリエンテーリングで順番が決まっているコースでの利用経験はありましたが、実はロゲイニングでNaviTabiを使うのはほとんど初めてでした。今回の大会を通じて、NaviTabiを使えば1人でも運営可能で、次回以降も少人数で大会を開催できる自信がつきました。

また、僕が「こういう大会があったらいいな」と思っていたものを実際に開催でき、参加者にも満足していただけたことは非常に嬉しかったです。当日は、多くのロゲイニング好きの方々や日本ロゲイニング協会の方も参加され、NaviTabiの関係者の方も遊びにきてくださり、ロゲイニングに詳しい方々との新たなつながりができたのも良かったです。

── 同じようなイベントを少人数でやりたい人へのアドバイスはありますか?

当日の運営自体は非常に省コストで行えると思いますが、事前の現地調査や開催エリアによってはパトロールのような業務も必要になる場合があり、基本的には3~5人程度のチームで運営するのが望ましいかもしれません。今回は他の大会と日程が重なって運営者を集めることができず、結果的に1人での運営で開催することになりましたが、次回以降はもう少しスタッフを増やそうと思っています。

それでも、一桁人数で大会を開催しうるのは非常に革命的だと感じています。通常、大会開催の費用の多くは資材のレンタルや事前の地図作成、運営者の宿泊交通費などにかかりますが、これらの費用を抑えることができれば、参加者にとっても参加しやすくなり、より多くの人に楽しんでもらえる大会が実現できると思います。

── 最後に今後、山田さんが計画されていることがあれば教えてください。

現在、2つの大会を予定しています。まず、11月2日に「青梅マウンテンロゲイニング」という大会を開催する準備を進めています。僕は東京都の青梅というエリアがとても好きで、そこで山岳エリアを含むロゲイニング大会を開催したいと考えました。山岳エリアを含む場合、参加者の安全管理が重要になりますが、NaviTabiのライブトラッキング機能やメッセージ送信機能を活用することで、安全性を向上できるのではと考えています。現在さまざまな団体や地域の方々と交渉を進めていますので、ぜひJOYでお気に入り登録をして追加情報をお待ちください。

もう1つは、今回開催した「市川七福神ロゲイニング」の第2回を来年1月5日に開催する予定です。七福神巡りは本来お正月に行うものですからね。今回のように夏に開催すると暑くて大変だったと思いますが、1月は気候的にも走りやすいと思います。競技的にも満足度をさらに高めて、参加者の皆さんに楽しんでいただけるよう頑張りますので、ぜひお楽しみにお待ちください。

── 山田さんの情熱と工夫が詰まった運営の裏側を伺い、少人数でも楽しめる大会作りのヒントをたくさんいただきました。本日はありがとうございました。

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